ミャンマー北部の秘境・Goteik鉄橋【2020.2】

 大学院入学前の春休み。武漢での新型肺炎発生の一報は、日本にも届いていたもののどこか他人事。これが学生時代最後の海外渡航になるとは露にも疑わず、バンコク行の飛行機に乗り込んだ。

 

 目的はミャンマーのMandalay~Lashio線に位置するGoteik鉄橋。土木分野にバックグラウンドがある私としては、大渓谷を跨ぐトレッスル橋に惹かれていた。そして道すがら、開発によって線路端の光景が変わりつつあるヤンゴン環状線や、廃止が報じられているタイ・バンコクのフワランポーン駅の風景をカメラに収める計画を立てた。

 

Flight:羽田(JL033)バンコク(PG709)マンダレー

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 乗り合いバスで市内に投宿し、翌日はマンダレー市内を観光。そして薄ら寒さすら感じる朝4時、Mandalay発Lashio行の列車に乗り込んだ。目当てのGoteik鉄橋を渡る列車は1往復しかないのだが、幸い上下が交換するのは鉄橋を渡った先の駅。Goteik駅で下り列車を降りて、上り列車を待ち構え、撮影した後に駅に急げば一日で撮影が完結するはずだ。

 

 レールのうねりに同期して上下左右に揺れる動く客車に一抹の不安を覚えつつ、一等車のくたびれたモケットに身をうずめること数時間。突然前方で土煙が舞いだすと同時に、これまでとは違う小刻みな振動に飛び起きた。どうやら不安が的中し、本当に脱線したらしい。 f:id:enoura66:20220304100405j:plain

 客車前方の車輪が完全にレールから外れている。なすすべなく乗客たちが見守っているとどこからともなく復旧資材を抱えた鉄道員たちがやってきた。どうやらジャッキとギアを組み合わせた機械で車両を戻す様子だ。脱線復旧手順は以下のとおりである。

①車両の両側計2か所でジャッキアップ

②ギアで水平方向にジャッキをスライドさせる

③スライドしきったらジャッキを下げて手順を繰り返す

 

 結局3~4時間遅れで現場を発車。脱線した車両を途中駅で切り離すなどの作業もあり、1日でGoteik鉄橋までたどり着く目論見は外れてしまった。仕方なく途中のNawnghkio駅で下車し、Googlemapを頼りに国道沿いのホテルに飛び込んだ。

 

 翌日は打って変わって万事順調。あっさりGoteik鉄橋にたどり着いた。

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 英国統治時代の1900年に建設されたトレッスル橋。削り取られた岩肌を背に橋脚が連なる姿が美しい。当初の旅程は完全に崩壊してしまったが、途中駅で仕入れたミャンマー風焼きそばと飲み物代わりのスイカを手に、列車を待つ時間は至福のひとときだった。